相続周辺で「タイミング」がとても大切なのが実家の売却。

国による介護のしくみができてからは、相続ばかりでなく、介護費用の捻出のために、実家の売却が検討されるようになりました。

 

例えば、親が30代の時に購入した一戸建て。現在親は80代で、実家は築50年になっているとします。
たぶん購入時は、のちに実家を売ることなど考えなかったでしょうし、長いこと問題意識など何も持たずに過ごしてきたことでしょう。しかし、数十年を経て、現実に家の売却が目の前に迫ってくると、家が売れるか売れないか、その後の介護や子の生活に、大きく影響が出ることを実感することになります。

今回は、私道が含まれた一戸建ての売却のリスクについて触れておきます。

 

黒く太い道路が公道、赤い部分が私道で7軒の共有とします。
入居時、同じ世代だった入居者たちは、高齢化が一斉に進みます。

 

難しい状況は以下のような経過をたどって生まれます。

子どもたちが大人になり家を出て行く。
それぞれ夫婦だけの二人暮らしになる。
中には最初から子のいない夫婦もいる。
配偶者を亡くし、独り暮らしになっていく。
その残された一人暮らしの所有者が、認知症、あるいは突然倒れて入院、意思確認が出来ない状況になる。

 

このため私道の所有者たち全員にハンコが貰えず、売却が進まない事態が発生しています。私道というのは、各敷地と私道との境界確定だけでなく、通行や掘削工事などでもハンコが必要となるため、その分他人の協力がないと売却できないというリスクを含んでいます。
売却に当たっては、築年数が相当経っているため、当然すぐに建て替え工事が可能な状況が整わなければ、不動産業者も売りずらいわけです。

 

変な話、この7軒の中で、一番若くして両親を亡くした子たち、いわゆる相続人となった子たちは、周囲はまだそこまで高齢でなかったため、ハンコを貰えて、スムーズに売却が出来たかもしれません。しかし、後になるほど、ハンコを貰えないリスクは高まっていきます。

 

しかも図では青で塗りつぶして示したように、一番手前の家は公道に面していて、必ず私道を通らなけらばいけない奥の家とは条件が異なります。こんな条件の違いも、少なからず影響があり、ご近所付き合いがうまく出来ていないと、「ふだんうちの前を通る時に挨拶もしないのに、どうして奥の家のために、うちがハンコを付かないといけないんだ。」という事になりかねません。これは高齢化云々には関係のない事例ですが。

 

仮にお付き合いや協力体制ががうまくいっていたとしても、今は高齢化の影響でハンコが貰えず、とても気に入った老人ホームを探せたとしても、家を売ってそこに入る機会を失ってしまうことがあること、覚えておいて下さい。これが今の現実です。数年とか、時間をかければ進めていける事ですが、当初の計画は崩れてしまいますね。

 

もちろん、子が親の介護や見送るためのお金を十分に準備することも一つの方法です。親を有料老人ホームに入れるためのお金をポンと出し、月々の支払いも支払うことができれば、それで済む話です。でもそのお金は、だいぶ前からそのつもりがなかったら、準備出来るでしょうか。

 

なので早めの話し合い、早めの準備をお勧めしています。
親の財産(特に不動産)を必ずしも活かせるとは限りません。不動産には、こうした問題を含んでいることがありますので、注意が必要です。何事もタイミングがとても大事になってきます。

 

70歳過ぎてからの終活では遅い、少なくとも40代・50代で始めないと間に合わない、とお伝えしているのは、まさにこうした難しいお金や手続きの問題が出てくるからです。

 

将来、自分(親)の介護のために、子の仕事時間を奪いたくない人。
子が身体を休めるための休日を奪いたくない人。
子を自分のために介護別居・介護離婚させたくない人。
(子のいない人は、この役目が、姪っ子・甥っ子に行ったりします。)

 

そんな想いを持つのでしたら、すぐに終活への関心を持って、今の生活から見直してみましょう。