日本で遺品整理と言えば、手間暇がかかったり、費用がかかったりする、負担の大きなイメージがあります。
先日、何気なく見ていた家具をテーマにしたNHKの番組で、アメリカにはエステートセールなるものがあることを知りました。終活関連の番組ではなかったので、偶然知ったものです。
では、まだまだ日本では馴染みのないエステートセールとはどういうものなのでしょうか。
それは、本人または家族が、家を売り場にして家の中の物を売ってしまうという、従来の遺品整理業者とは全く異なる売り方でした。
近所の人たちは、この家でセールをしますよというチラシを見て興味を持つと、商品を見に行きます。普通の家が、言ってみればその時は商店になるわけです。
売る側の利点としては、お客さんが向こうから家にやってきてくれるので、重たい家具など動かさなくていいという点です。
もちろん、食器は食器棚からテーブルの上に揃えて出したり、言ってみれば雑貨屋さんのように見やすくレイアウトしてお客さんを迎えます。
その1点1点に値段をつけ、家に居ながら、売ることができるのがエステートセールです。
アメリカでは、ヴィンテージ家具に人気があり、素敵な家でセールがあると行列ができることもあるとか。
実際に家の中に入るのですから、持ち主の暮らしぶりも感じられ、本人が大切にしていた物は、次に大切にしたい人に渡って行くのでしょうね。
家族による遺品整理だけでなく、施設への入居や、通常の引っ越しの際にも行われているとのことで、エステートセール専門の業者さんも居るそうです。
日本では、少しでも不用品をお金に換えようと思うと、リサイクルのお店に運んで持ち込んだり、業者さんに引き取ってもらったり、あるいは最近では、ネットで出品して販売したりと、ある程度の品質と分類が必要な部分があります。
しかしこのセールでは、大物家具から香水の使いかけまで、店開きして買い手がつけば、一度にどんな物でも直接売ることができてしまう、というものなんですね。
今の日本では、いくら住む人が居なくなる家と言っても、大勢の人を中に入れるというのは抵抗感があるかもしれませんが、家も商品として、売りに出してしまうこともあるそうです。
このままの形が、日本で定着するかわかりません。しかし、例えば音楽をやっていて楽器をたくさん持っているのであれば、知り合いの趣味仲間を集めて、気にいったら買ってもらうなどといった、形見分けのニュアンスを残した、安心感の持てる枠組みを用いれば、この発想をうまく応用していけるかもしれませんね。
単にお金のことだけでなく、コレクションの趣味がある人にとっては、次に宝物を委ねることのできる未来の持ち主と出会う機会になるのかもしれません。