従来の老後のイメージとは?

日本が高齢社会に入ったのも、超高齢社会に突入してしまったのも、介護制度ができたのも平成です。高齢者として生きる期間が長くなったことは、平均寿命の数字が示していると言えるでしょう。

最終的に介護が必要になると、自宅介護か施設への入居かを考えるようになります。自宅介護であれば、手すりや段差をなくす改修工事をしたり、多くが介護制度を利用するための手続きに入ります。施設を探すのであれば、それぞれ条件があり、暮らしが変わります。専有で使えるスペースは狭く、ある意味共同生活に入るため、抵抗感を持つ人もいます。しかし、そうしたしくみとは違った「シニア向けマンション」というものがあるというので、モデルルームを訪れました。いったい何をもって「シニア向け」なのかを見学取材しています。

 

普通の高齢者施設と違うところは?

一般的な高齢者施設と一番異なるところは、“利用権”ではなく、“所有権”であること。これは、単に不動産としての資産価値があるだけでなく、どの様な介護状況になっても、出ていかなくて良いことを意味します。要するに普通のマンションと同じで、自宅なので住み続けられるわけです。あるいは介護度によって、夫婦の一方が別室に移される、といったこともありません。

いま、入所時に想定した年数よりも、長生きしてしまうことで、介護施設が倒産に追い込まれる事態が起きています。これに対し、シニア向けマンションでは、各自が購入したマンションですので倒産がありません。

普通のマンションとの違いは?

では、普通のマンションとどこが違うのかと言えば、シニアに適した共用施設を備えていること。見学したマンションでは、カラオケルームや麻雀室、共同温泉など、シニア向けの施設が作られるとのことでした。接客に使える広いラウンジには、本棚も設置され、入居者同士の交流の場にもなりそうです。

また建物内にはレストランも入るため、自分で作らなくても食事が出来るとのことでした。レストラン運営費として月々支払う費用がありますが、栄養士によってカロリーや塩分の計されたヘルシーなメニュウーが提供されるそうです。朝・昼・晩の3食の利用ができるのは便利で、利用した分の代金を支払います。料理の出来ない人ばかりではなく、ご夫婦で入居される奥様にとっては、夫を残して気兼ねなく友人と旅行ができると好評とのことです。

 

各部屋も「シニア向け」に特化しています

玄関に設置されたボタンやセンサーで、在宅かどうかスタッフが管理してくれます。一定期間人の動きがないと、自動に通報が行き安否確認をするそうです。また玄関にはベンチがあり、室内への移動もバリアフリーとなっています。玄関以外、室内の扉は車いす移動が楽な引き戸になっていました。トイレや浴室には手すりが付き、各所に緊急コールボタンが付いています。

 

健康相談・医療・介護

建物内に健康管理室があり、気になることがあったときには、日中勤務している看護師に気軽に相談できるそうです。また提携病院の医師によって、訪問診療が月1回行われ、希望すればワクチンの接種も受けられます。健康診断も年1回実施。また緊急時の救急車ですが、近くの大学病院が住民患者を受け入れることになっていて、たらい回しの心配がないとの説明を受けました。

介護については、建物内に介護サービス事業所が併設されるとのこと。高齢者・障がい者のサポートはもちろん、介護保険を利用したサービスを受けられます。

ここではシニアの「もし何かあったら」の不安を先に解消する体制が作られていました。

 

生活サポート

コンシェルジュがいて、様々な取り次ぎサービスが受けられます。クリーニングや宅配、タクシーの手配、コピー・ファックスも頼めます。体調の悪い時には、食事を運んだり、後片付けをして貰えるそうです。外出には、最寄り駅や医療機関を巡回するシャトルカーが運行されていて、住民の足となってくれます。

 

かかる費用は?

まず、所有権ですので、マンションの購入費用が必要です。これに高齢者向けのサービスが準備されている分、月々の管理費は通常のマンションよりも高額になっています。修繕積立金と管理を合わせると、ここでは9万円前後が最多となっていました。これに1名加わるごとに2,5000円が追加されるとのこと。そのうえで、日常の生活費がかかるわけですから、月々の支出額はそれなりになります。もちろん、これに介護費用が加わってくると、その分の出費も想定しなければなりません。
ただし、有料老人ホームでも、月々の支払いはあるため、実際には具体的に個別に比較することになるかと思います。

 

デメリットは?

所有権ですので、住民である所有者が亡くなった場合は、相続人に相続されます。見学したマンションでは入居条件として50歳以上ということを掲げていましたので、もし仮に相続した人が、次に自分が住もうと希望しても、50歳に満たない場合は、条件を満たすまで待つことになります。

 

まとめ

今回、「シニア向けマンション」という新たな暮らしをご紹介しましたが、これは自宅介護を行いやすくしたしくみや形を、マンションという集合住宅で実現させたものであるとの印象を受けました。自宅介護というからには、施設の入居よりもプライバシーを守りやすく、また個々のスペースも広めに確保され、門限など制限も少なく、自由度がぐっと高くなります。将来の不安を先に解消されているので、自立している時期に入居すれば、安心を得た状態で年を重ねていくことができます。

 

しかし、やはりこれも先立つものは費用です。購入費用に加え、月々の支払いや生活費の目途が立っていなければ、選択できません。ただし同レベルの支出額の有料老人ホームも存在しているため、選択肢が広がったことは、より自分に合った老後を実現できる方向に向かっていることになります。まだこの様なマンションを提供している会社は少ないと聞きました。今後需要が増えれば、身近な地域でも見られるかもしれません。

 

早く終活に関心を持てば、好きな暮らしを目指して、費用を準備していくことも可能です。「終活なんてまだ早い」と言っているうちに、どうでもいいことに無駄使いしてしまう人も多くいます。その時になって、家族を巻き込み困ってしまっても、その時は既に遅し。自ら老後の選択肢を狭めないためにも、早めに情報を得て、考える習慣をつけておくと良いと思います。

 

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見学したシニア向けマンションの画像は以下の通り。

  

  

  

 

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