2017年 未来患者学サミットとは?
8月11日の山の日、品川シティホールで『未来患者学サミット』が開催され、参加してきました。
このイベントは、おのころ心平氏・福島正伸氏・川嶋朗氏らの発案によって2016年に初開催、今回2回目を迎え、2017年の全体のテーマは女性医療でした。開演1時間前に到着しましたが、受付前にはもう既に行列が出来ていました。
ホールで行われるオープニングとエンディング以外は、5つの会議室とホール開催のセミナーやワークに分かれます。
選択によりそれぞれ違う体験をする、ということで、私個人の体験を終活カウンセラーの視点でお伝えしていきます。
医療系のイベントで聞いた「相続」の悩みがもたらす影響
受付時に会議室のチケットを貰うことが出来るのは1枚のみ。私の第一志望は「女性のメンタルケア外来」でした。
ここでの主なテーマはストレス。特に女性は更年期で不調を感じることが多く、小野先生曰く、「まずは自分を知ることが大事」。
女性の更年期は40代半ばから50代半ば。更年期で体調が悪いと外来に来る患者さんの話をよくよく聴くと、子どもの進学問題を抱えていたり、親の介護問題、そして相続の悩み・・かなりの割合で、更年期の不調には、別の原因の正体がある、ということでした。
「普通、友達とランチに行って、相続の話などしませんよね!」(講師談)
どれもちょうど更年期の頃にやってくる家族の問題です。
まさか、医療系のイベントで「相続」のキーワードが出てくるとは思っていなかったのですが、身内の介護の負担・相続の悩みは、多くの更年期の女性に負担となっていることが、医療の現場からも報告されたのでした。
じっくりと話を聴く医者・患者と向き合う医者は、見抜いているのです。何でも更年期のせいにして、医者に診て貰いさえすれば、医者が治療をしてくれるだろうと考えていることを。まずは自分が自分の事を知らなければ、ということを伝えていました。
それが出来たら、次にきちんと問題に向き合っていくこと、ですね。
病は「全部お任せで治療して貰う」のではなく「自分で考えて治すもの」
イベント発起人の1人である福島正伸氏。今年もオープニングから高いテンションで登場していました。
「セカンドオピニオン」という言葉は知られていますが、福島氏は何と37オピニオンを受けた経験の持ち主。そうしてようやく自分に合った治療に出会ったのです。その経験から出る言葉には説得力がありました。
凝縮してお伝えすると、次の通り。
37オピニオンで言われたことは少しずつ違っていた。ある医者は手術が良いと言い、また別の医者は放射線治療が良いと言う。では、A病院・B病院・C病院のどこがいいか、と尋ねれば、それはうちの病院が一番良いと言う。もちろん皆どの医者も、命を救おうとしてのことである。もし最初の病院で、言われるがままに治療を受けていたら、社会復帰は諦めなければならなかった。そこが納得できず、希望する治療に出会ったのは37オピニオンまで粘ったから。自分の命の事なのだから、自分で決めた方が良い。そのためには、自ら学ばなければ、自分で決めることが出来ない。
これは終活も全く同じです。
それもそのはず、医療を受けることもまた終活の範囲ですから、このプロセスは全く同じなのです。
終活カウンセラーの視点から
相続で言えば、病気治療の科よりも、もっと多くの専門家が存在しています。どの専門家も、自分の提案が一番いいと言うでしょう。この方法しかない、という場合もあるかもしれません。その1か所で言いなりになるか、しっくりこなければ、別の所を回ってみるか、それは自分次第です。
誤解のないように、決して実務を行う専門家の提案がダメだという意味ではありません。一生懸命考えてくれるはずです。ただし、たまたま訪れた専門家の意見をそのまま採用するよりも、別の意見も聞き、いくつか出揃った上で、一番自分に合った方法を選択する方がいい、という意味です。あるいは、まずは自分の希望を話し、法が許す範囲で希望に沿って実行してくれる専門家を探せれば、よりスムーズでしょう。
ちなみに福島氏は、声を失わない治療を目指し、第三者的な立場である、おのころ心平氏と出会い、その希望が叶う陽子線治療の道が拓けています。治療を実行する医者よりも、多くの医者を知るプロデューサー的立場の方が、選択肢を案内して貰えたのでした。氏の「ただ生きていても意味がない。社会復帰をしたい」という願いは、ここでようやく聞き入れられました。37オピニオンの全ての医者たちに感謝の念を持ちつつ、最後は自分で決めたのです。命をかけた選択でした。
それでもなお、病気も相続も、自分では何も知ろうとせず、何も学ばず、選ばない人になりたいですか。それも一つの選択ですが、100%依存した以上、その責任は自分にあります。そして先に考えない人は、後悔することもある事は覚悟しておいて下さい。
今後改善して欲しいところ
・開始時間の設定が昼食を取りずらい。そのため1コマあきらめ食事へ。
・開始前の行列の最後尾にスタッフがいない。最初何列かも揃っていなかった。
・受け付けを済ませてもホールが開場しておらず、ホール前でごちゃごちゃ。
(1時間前に行った意味はほとんどなかった)
・会議室でのセミナー参加はチケット制。早い者勝ちで、前のセミナー終了が遅れるとアウト。
・セミナー間の休憩時間に、チケット取り・席取り・トイレは厳しい。トイレは行列。
(基本会議室・ホールは途中退出・途中入場は禁止)
多くの専門家が集結していますが、参加出来るコマ数は限られていて、欲求不満気味になることも。何よりも参加者にとっては「競争」に組み込まれ、狭い通路を行き来しなければならず、ストレスを感じるシステムでした。主催者側の「著名人を呼んで立派なイベントに仕立てた」という充実感を満たすよりも、参加者の視点を大切にして欲しい。深刻に病気治療に悩む人が参加しやすい構成を望みたいと思います。
最後のまとめ
このイベントは西洋医学も東洋医学も、対立する必要はないと考え、両方を受け入れているところに包容力を感じます。どちらが正解と決めつけず、両方をうまく用いていけばいいとスタンスで、セミナーでも両方の分野が参加をしています。
また、医療従事者と診て貰う側が、強者・弱者ではなく、上下関係でもなく、あくまで対等としています。それは、自己責任で自分が選択をしていく、というあり方を提案していることでもあります。
つまり、主催者が西洋・東洋の医療に境界線を引かず、フラットな姿勢であろうとしている所に大きな魅力を感じます。また、このイベントに参加する医者たちは、病気ではなく、患者を診ようとする姿勢を強く感じさせてくれます。病気にしか興味を持たない科学者というよりも、患者は家族にとって大切な一員であり、また社会の一員であることを受け入れ、一人一人の生き方を認めてくれる医者が多く参加しているという所が印象的でした。
『未来患者学サミット』は、現在年に一度の開催です。イベントの進行としては改善の余地ありですが、セミナーの内容は、素人が違和感なく受けられるものです。今まで知らなかった治療・医者との出会いが、ここにはあるかもしれません。