これは本当にあった話です

Cさんは、ずっとあるストレスを抱えていました。車で通勤をしているのですが、自宅のすぐ近くに、1か所だけとても道幅が狭い所があったのです。しかもそこは、両側とも高い塀が作られています。

 

出勤時は視界も明るいのですが、問題は夜の帰宅時。見通しも悪いですし、突然道幅が狭くなるこの場所を通るのが嫌で嫌で仕方ありませんでした。

 

お役所などに相談してもどうなるものでもなく、Cさんは思い切った方法で解決していきます。このケースは相続とは関係なかったのですが、日本では、一番大きな財産は不動産であることが多いため、交渉時の参考にしていけると思います。

 

道路のイメージを図にしてみました。

 

 

この2軒に挟まれた部分だけ、道路幅は2m数十センチ、高い塀もありました。

 

この様な道路は二項道路と言って、家の建て替え時には指導を受け、道路幅が4mとなるよう、道路中心線よりもその分下がって建て替えることになりますが(=セットバック)、建て替える様子は全くなく、Cさんはしびれを切らしていました。

 

こんな時に陥りがちな心理状況とは?

Cさんは、この問題を解決すべく、行動に移しましたが、Bさん宅は最初から交渉の余地はありませんでした。

 

実はこういう心理、とてもよくありがちなんです。

 

「人の困り事にどうして耳を傾けないといけないのか」、と全く他人事という感覚に陥るのですが、一度はきちんと話を聞いてみる価値があると思って下さい。困り事の相談か、とんでもない理不尽な話かは、人生経験で判断できると思います。

 

そしてCさんは反対側のAさんと交渉することに。

 

ところがAさんは高齢で病気入院中。別の所に住む息子さん=ここではAジュニアと呼びます=が対応することに。最初Cさんが出した案は、セットバック予定の部分(=道路を狭くしている部分)の土地を買い取りたい、というものでした。

 

実はCさん、不動産の仕事でかなり成功していて、いわゆるお金持ち、いえ大金持ちだったのです。道路として使う部分を買って、Aさんの家族には、通行する権利を持って貰う案を思いついていました。Aさん宅は、もう一方の道路にも面していますし、これも一つの手なのでした。

 

ところが、土地というのはそう簡単にはいかないもので、購入したいと思った土地の一部に、Aさん以外の人の権利が付いていることが発覚。しかも、所有者の住所は、東京23区の制度以前の住居表示となっており、実質は所有者不明状態。これを調べて探すには、時間と費用がかかり、果たして交渉できるかどうかも不明で、振出しに。

 

そして最終的に思いついたのが、『CさんがAさん宅の建て替え費用を出す』という究極の提案でした。

 

AさんとAジュニアは、この提案を受け入れ、今ではAジュニアの家族が越してきて、暮らしています。『金持ち喧嘩せず』とは言ったもので、人の家を建ててあげてしまい、解決へと結びつきました。

 

Cさんの趣味は車ですし、夜道も以前より安全に通過できるようになりました。

 

 

この事例から学べること

相続時、あるいは介護費用の捻出などのため、隣の家が土地を売る場合、土地境界のハンコを求められることはよくあることですが、この時に「一度は交渉に応じてみる」ことをお勧めします。

 

先ほども書きましたが、隣同士だった場合は、なお更「自分の土地の問題」でもあるのです。話もろくに聞かず、玄関先で追い払ってしまうなんてもってのほか。

 

相手の言いなりになれ、という意味ではありません。最初から話し合いのテーブルに着かないことは、自分の土地問題の先送りにしかならない、ということです。

 

時間のズレはあっても、土地境界問題は、お互いさまの事ですし、相手がハンコを求めている時期に協力することで、メリットも色々とあることを知っておきましょう。やはり、依頼された側の方が余裕がある分、立場としては有利になります。

 

1. 測量・境界確定費用はばかになりません。(目安として30坪程度でも数十万円は覚悟) それが隣の境界確定に応じることで、隣の費用で一方向の境界が決まり、十万円単位の得が見込まれる。

2. 道路側の境界も、隣が先に確定することで、隣接も確定しやすくなり、この方向も依頼時に費用の軽減につながる。

3. 境界確定では、例えば塀の厚みの内側・外側・中央と、ほんの数センチで揉めるものですが、相手は事情をかかえているため、小さな認識の相違があった場合、何とか解決したいと譲歩の姿勢を示しやすい。

4. 決裂せずに最終的に境界確定に至れば、協力者ということになる。

5. こちらは時間的に余裕があるため、納得するまで周囲に相談しながら、交渉に臨むことができる。

 

「隣の都合で言ってきた事だから応じたくない」というのは、捉え方に偏りがあり、自分の土地の問題が把握出来ていないことになります。本当に相手のための協力でしょうか?もしかしたら、こちらが先に同じお願いをしていたこともあり得ることです。

 

上記の家を建てて貰ったAさんは、隣接でもないですし、Aさん側からCさんは、家の前を通るただの通行人であったはずですが、相手の困り事と要望を聞き、交渉の余地を与えたことで、棚からぼた餅のご褒美を受け取りました。

 

学ぶべきは、フラットな心理状態で判断できる人の方が、自分の立場や状況、そしてメリット・デメリットを冷静に考えることができ、自然といい方向へ進んでいくということです。

 

逆に頑固で余裕のない心理状態では、メリット・デメリットさえ判断できず、意地を張ることに支配されていきます。頭の中が柔軟なうちに、こうした知恵も心得ておくと良いでしょう。

 

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