複数のスクリーンを持ち、いくつもの作品が上映されるシネマコンプレックスだけでなく、時々こじんまりとした映画館の上映作品もチェックしています。

 

先日訪れたのは、川崎市アートセンター。

 

建物内にはホールと映画館があり、映画館の方は小さくて、定員100名ちょっとのミニシアターになっています。

 

いま上映中の『素敵な遺産相続』という映画を観てきました。

 


(作品のチラシの一部です)

 

映画はシャーリー・マクレーン演じるエヴァが夫を亡くし、その葬儀の場面から始まります。エヴァの40年来の友人・マディ(ジェシカ・ラング)も参列しています。エヴァは元教師で、夫の葬儀といえども落ち着きがあり、粛々と進行に従っていますが、むしろ友人のマディの方が、何やら感情が高ぶっている様子。話は、エヴァが受け取る生命保険金をめぐって展開していきます。老いが忍び寄っている二人の状況は、実は暗いのです。

 

・エヴァ=夫を亡くしたひとり暮らしの高齢者。認知症の不安も出てきている。
・マディ=医者に生存率は20%と告知される。夫の浮気にも悩まされ、うつ気味。

 

しかし女性が一旦「残りの人生、やりたいことをやる」と開き直ると強いですね。

 

女性が殻を破って一生に一度は経験してもいいかも、という豪遊が描かれています。思いきり買い物して、おしゃれを楽しむのでファッションが素敵ですし、リゾート地の陽射しが明るくて、画面がとてもキレイでした。

 

そして、友達・子の親への心配・病気・夫の不倫・保険金・バカンス・恋・カジノ・詐欺・教え子との再会・銃撃・・・と、たくさん要素があってドタバタ感はありますが、これは「笑いに行くための作品」ですから、難しいことは考えない方がいいでしょう。軽快なコメディー作品です。

 

もう一つ見方を少し変えてみると、シャーリー・マクレーンという女優さんが、御年80歳を越えてなお、映画の主役を張っている、というのもすごい事ですよね。TVドラマの『ダウントン・アビー』でも、伯爵夫人コーラの母親役を演じています。

 

私が行うアンケートでは「終活」のイメージがとても暗くて、多くの人がマイナス面・マイナス感情に偏っています。映画では、人との繋がりの中に幸せがあることが描かれていました。現実にはあり得ない状況もありましたが、残りの人生を意識するようになった時にこそ、「人生を楽しむ気持ち」を持っていることの大切さを教えてくれている様でした。これは女性の方が得意かもしれませんね。よく結婚している男性は「妻よりも先に逝きたい」という願いを持つようですが、その辺に自信が持てないからかもしれません。

 

チラシには、数名の著名人の方々の感想が載っていましたが、その中でユーモアがあったのが歌手の加藤登紀子さんのメッセージ。
「痛快!やりたい放題やっちまう女たちの迫力に、ただただ拍手です。60代はロッキー、70代はコッキ―(古希)と自分を鼓舞してきた私。80代こそハッピーと、確信しました!」

 

私の世代にとって、親世代のいきいきとした女優さんの姿を見るのは、とても嬉しいことです。色々な意味で元気を貰いました。